インドネシアが予定している仮想通貨の課税および規制改革は、投資家とデジタル資産エコシステム全体にとって極めて重要な転換点となります。2025年8月1日から、政府はデジタル資産を金融商品として再分類し、監督権限を商品先物取引規制庁(Bappebti)から金融サービス庁(OJK)へ移管します。この変更により、業界全体でライセンス要件の拡大やコンプライアンス強化など、より厳格な規制が導入されます。
今回の改革の大きな柱として、仮想通貨取引に対する課税の大幅な引き上げがあります。国内取引所での売り手には、取引税が従来の2倍以上となる0.21%に、海外の売り手には5倍となる1%が課せられます。一方、買い手に対する付加価値税(VAT)は全額免除され、市場参加を促進する狙いがあります。マイナーに対してはVATが2.2%に上昇し、これまでのマイニング関連の特別所得税は段階的に廃止、2026年までにマイナーも通常の所得税体制へ移行する予定です。これらの施策は、課税の標準化、透明性向上、越境取引の抜け穴封じを目的としており、インドネシアが仮想通貨を自国金融システムに正式に組み込む意志を示しています。
これらの改革は、市場参加者にとって諸刃の剣となり得ます。取引税の引き上げは、とくに個人投資家や小規模マイナーにとって取引意欲を冷やす可能性がありますが、買い手のVAT免除は市場参加の動機付けとなり、負の影響を一部相殺する可能性もあります。取引可能な仮想通貨のホワイトリスト拡大(851銘柄から1,444銘柄へ)は、業界全体で適応力の迅速な強化を求められる一方、市場機会の拡大と認知の広がりを示唆します。
インドネシアが地域的な仮想通貨ハブを目指す中、この規制改革は、急速に拡大する市場におけるイノベーション・監督・持続可能な成長のバランスを引き続き重視する姿勢を示しています。投資家は今後の動向を注視し、積極的なコンプライアンス戦略を採用することで、新たな規制体制下での競争力確保と市場機会の獲得を目指すことが重要です。